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裸の男と炎の祭り(※公式キャッチコピー) 黒石寺蘇民祭②

もう4時だぞ正気か。

10時からこの時間まで裸で外にいるんですよ、死ぬよ。どういう精神状態なの。

 

あ、争奪戦が始まると終わるまで駐車場から出庫禁止になるので、もし途中で限界!帰りたい!となった場合は気をつけてください。帰るなら4時前に帰れ。

 

 

いよいよ蘇民袋の争奪戦が始まります。本堂に男たちが続々と集まり場所取りをしています。

時間になると親方が小刀で蘇民袋の封を切るんですが、それまでの間で撮影禁止のタイミングがあったはずなので行かれる方は注意してください。行かないと思うけど。(誰かフラッシュ焚いてむちゃくちゃ怒鳴られてました)

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蘇民袋の封が切られた瞬間、一斉に男たちが動き出します。上から飛びかかる人、人の上に乗っかる人…どっかで見たことあるな、と思ったらライブハウスのそれでした。モッシュとダイブを想像してもらえると一番分かりやすいです。

激しいけど多分BRAHMANのライブよりはマシです。

 

ちなみに蘇民袋の中にはこんな護摩木が入っていて、拾えるといい事あるんだって。私は自力では拾えなかったんですが、隣にいた知らんおじさんがくれました。
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蘇民袋はただの麻袋なんだけど、その結び口により近い部分を取った人が「取り主」と呼ばれその年のMVPになるんだそうです。

もみくちゃの団子状態になりながら、境内を出ます。もうこの状態じゃどこに袋あんのか分かんないのでは…誰も分かんないままモッシュが繰り広げられているのでは…

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パトカーや救急車も待機しています。

 

裸の男のもみくちゃ団子は境内を出て、更に寺の敷地からも出て一般道へなだれ込みます。

時刻はもう5時近く。朝だし一般道なので当然車が通るんですが、その度に1度取り合いが止められ全員「スンッ……」となるのがシュールでした。いや、仕方ないけどさぁ。危ないからね。

あと途中「ダメだ!じゃんけんで決めろ!」という親方の声が聞こえたりしたんですがじゃんけんで決めるなら最初からこんな祭りしなくてもいいじゃない…。

怪我を防ぐためなのかもしれないけど、平和的解決方法をここに持ち込むのが正しいのか分からない。殴り合いで決めろとは言わないがじゃんけんは…じゃんけんはなぁ…。

そんな感じで獲り合いの間は見てる方は正直グダグダです。

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空も白んで来た頃、いよいよ取り主が決まりそうに!!地元のマスコミもその瞬間を逃すまいと必死に食らいつきます。

ちなみにここまで境内から多分1キロくらいは下ってきたのでは?その辺の田んぼだか畑だかになだれ込んで佳境を迎えます。

この辺りになると脱落した人も結構多くて遠巻きに眺めたりしてる。

 

何がどうなったか分からなかったけど団子が解れたので、どうやら今年の取り主が決まった様子。(もう全然わかんなかった)(なんならちょっと眠くて覚えてない)(途中グダグダが長くて飽きてた)

 

この年は確か花巻市の方だったと思います。意外と県内のみならず全国各地から蘇民祭ファンが集まって参加してるので、地元の奥州市以外の人が取り主になることもあるみたい。

 

取り主が決まるとぞろぞろと皆で境内へ戻るんですが、前を歩いていた外国人のお兄さんが「来年ハ絶対取リタイ!!」と熱く語っていたのが印象的でした。海外の方も参加してるの、凄いよねぇ…。

 

取り主が決まったのを見届けたあとはちょっともう眠気が限界だったので、そのまま境内へは戻らず駐車場へ行き帰りました。朝までオールなんて何年ぶりだ。

2回行ったうち、最初に行った時は寒くて争奪戦まで居られずに帰ってしまったので、この時は無事見届けられたし最初から最後まで居られたので満足です…。

 

 

今思い出してもあの雰囲気は現場に居ないと味わえない、正に「奇祭」でした。ずっと聞こえる「ジャッソー」「ジョヤサ」の低い掛け声がまた「この世じゃない」感を醸し出している。明かりもほぼ火しかないしね。(終始報道陣や観光客のカメラのフラッシュバチバチなのでそこまで薄暗い印象はないけど)

 

あと男のケツを一生分見ました。

裸の男がゲシュタルト崩壊しかけて、一緒に行った友人(男性)に「なんで貴方はふんどしじゃないの…?」と聞くくらいには全員ふんどし。(ちなみに当日飛び入り参加も出来るみたいで売店でちゃんとふんどし売ってる)

今でこそふんどしだけど2007年くらいまで付けてなかったらしいよ。ただそういう目的の人達が沢山来ちゃったり、公然わいせつにあたるのでは?という警察からの声もあったりで(それに対しては野暮なこと言うな!という反論も勿論あった)今はふんどし着用が決まりになったそうです。何回ふんどし言うんだよ。

 

 

平安時代くらいから続いてるらしいけど、こんな変な催し(褒めてる)が令和のこの時代まで変わらず続いてるのが単純に凄い。このご時世で中止になってしまったけど、こうやって歴史や文化がちょっとずつ失われてしまうのかなって怖くなったので来年こそは開催されて欲しいです。

私は性別的な意味でこの祭りに参加することは叶わないけど、こうしてブログにして誰かが読んでくれて、岩手に蘇民祭という変なお祭り(褒めてる)があるって事を知ってくれたら、そしてそれが伝承のきっかけのきっかけのきっかけくらいになってくれたら嬉しいなと思います。おわり。