裸の男と炎の祭り(※公式キャッチコピー)黒石寺蘇民祭①
蘇民祭って知ってますか。
多分、岩手県民とゲイ・コミュニティくらいでしか聞くことの無い単語だと思うんですけど、岩手県内各地で冬に行われてる裸祭りです。
旧正月の7日夜から8日朝にかけて行われる行事で、裸の若者たちが堂前で東西に分れ、押し合いながら「蘇民袋」を奪い合う奇祭です。
蘇民袋を奪い取った者が住んでいる方角が、その年、五穀豊穣の福運を授けられると言われています。県内では、奥州市水沢区の黒石寺(こくせきじ)、江刺区の伊手熊野神社(いでくまのじんじゃ)、花巻市の胡四王神社(こしおうじんじゃ)などで行われます。
いわゆる「奇祭」のひとつとして取り上げられる事が多い蘇民祭。一番有名なのは黒石寺の蘇民祭ですね。(ポスター騒動とかありました)
実は過去に2回ほど現地に見に行ったことがあります。何年か前にニコ動で「日本のヤバい祭り」として黒石寺の蘇民祭が生中継されてたこともありました(それも観た)
去年は例に漏れずコロナで開催中止となってしまったけど来年はどうなんだろう。
せっかく行ってきたのに特にレポートする機会もなかったので、記憶を辿りながら今更まとめようと思います。
最初に謝っておきますが5、6年くらい前の記憶なので、細かい行事の順番や内容なんかはちょっと間違っているかもしれないです。すいません。
そもそも蘇民祭って何
蘇民祭(そみんさい)は、岩手県を中心に日本各地に伝わる裸祭りである。1000年以上の歴史を持つと言われる。岩手県内では毎年1月から3月にかけて複数の蘇民祭が行われ、岩手の蘇民祭の名称で国の選択無形民俗文化財として選択されている。その中で最も著名なものは日本三大奇祭ないし日本三大裸祭りの一つに数えられることもある奥州市の黒石寺蘇民祭である。蘇民祭 - Wikipedia
蘇民将来って人がいい事したから神様が褒めてくれたよ!ってことらしい。
茅の輪くぐりも蘇民将来に由来するとかってどこかで聞いたことがあります。
これね
『備後国風土記』の逸文によると「北海より南方に旅をしていた武塔神が人間に化身し、貧しい蘇民将来(そみんしょうらい)と裕福な巨丹(こたん)という2人の兄弟に一夜の宿を求めたところ巨丹はこれを拒み、蘇民将来は快く旅人を泊め粟飯で貧しいながらも精一杯もてなした。それから数年後、妻を娶り子を為した蘇民将来の所に再び武塔の神が現れ、自分の正体が建速須佐之男命であることを明かすと共に茅の茎で作った輪を身に付け『我は蘇民将来の子孫である』と唱えれば無病息災が約束されるであろうと告げた」とされ、この逸話を基に平安時代中期には蘇民祭の原形が出来上がっていたのではないかと考えられている。武塔神の正体も地域により様々で、黒石寺においては薬師如来であったとされる。蘇民祭 - Wikipedia
んで具体的になにをするかというと
ふんどし一丁で
川で水浴びしたり火の上に立ったりした後
もみくちゃになりながら袋を奪い合う
というのを
2月の岩手県で、やります。
2月の、氷点下の、岩手県で、夜の10時から、朝6時くらいまでぶっ通しで、やります。
ふんどし一丁で。
ご存知かもしれないですけど、岩手県って本州の割と北の方にあるんですよ。2月上旬だとマイナス10度は絶対越えるんですよ。
蘇民祭が行われているのは岩手県でも県南部の方なので、盛岡よりはいくらか気温は高いんですがいかんせん山なので普通に雪積もってるし寒いです。しかも夜中だから一番冷え込む。
そんな中ね、川で水浴びるんですよ、ふんどし一丁で。
見えます?川に入り桶に入った水を頭から被り水垢離をしているんです。これが黒石寺蘇民祭の最初の行事。午後10時です。
もうね、写真撮るにも寒くて手がかじかむし人多くて三脚建てるスペースもないしで写真全部ブレブレ。ていうか寒すぎてカメラのバッテリーがめっちゃ減る。スマホも然り。
参加してる男性たちはずっと「ジャッソー」「ジョヤサ」という掛け声をしているんですけど、これは邪を払う的な意味だそう。ていうかもうなんでもいいから喋ってないとリアルに寒すぎて死ぬと思う。たぶんどさくさに紛れて「ヒャッハーどやさ」とか言ってもバレない。
私なんてめちゃくちゃ着込んでるのに(極暖ヒートテック、カイロ張りまくり、ダウン、ネックウォーマー、帽子、ムートンブーツ、靴下3枚くらい履いてた)寒くて寒くて、でもこんな着込んでるくせに寒いとか言ったらふんどしの人に申し訳ねぇと思って、ずっと「さ………ぁあ゛あ゛〜うええぇぃぃぃ〜カーーーッ!!」って言ってました。
川で水浴びたあと、次は火あぶりになります。
嘘だろ。
櫓のように高く組んだ生木に火をつけ、その上に乗って火の粉を浴びて穢れを祓う。(もうさっき十分穢れ祓ったじゃん…)これが柴燈木(ひたき)のぼり。
人乗りすぎてて見えないけど、もうほぼ火事。
ほぼ火事なので寺の下には消防車がずっと待機してる。
一緒に行った友人のコートのファー部分に火の粉が付いたみたいで、近くにいた知らん人に「あの〜燃えてますよ」とか言われてたんですけど、人生で知らん人から「お姉さん燃えてますよ」って声かけられることある?火の粉ついてますよ!とかでもなく「燃えてますよ」(ごはんつぶ着いてますよのトーンで)なのなんなの。
火のおかげでちょっとは暖かいんだけど、生木なので煙が凄すぎて目にくる。風下にいるともれなくいぶりがっこになります。
ひたきのぼりが終わると、何だっけなこれ…
火のついた棒で地面を左右に掃くようにして進みながら本堂に行くんだけど、この赤い手ぬぐいつけたおじさん(親方)の前で叫びながら地面に棒を叩きつけるんですよ。その気合いが足りないと親方に怒鳴られてリテイク出されます。地味に火の粉が飛んできて怖い。
水垢離からここまでで多分午後10時から12時?くらいです。
その後2時から鬼子のぼり(檀家の7歳になるこどもをおんぶしてお参りする)とかもあったんですけど、確か車に戻って寝てたので見てないですね、見ろよ。
蘇民祭は行事と行事の間が長いので、私のように車で寝たりとか、蘇民食堂(露店)で甘酒やおでん、そばなんか食べたりして各々時間を潰します。寒くてとてもじゃないけどずっと外には居られないです。まぁ参加者の人もっと寒いんだけど。
ちなみに参加者の人達はこのお祭り1週間前から精進入り(動物性たんぱく質、ニラ、ネギを一切口にしない)せねばならないらしく、この蘇民食堂でもそういうものは一切ない。うどんとそばとかもネギは別盛りになってる。もしかして出汁も植物性なのかな。
でも正直もつ煮とか牛すじ煮込みとか食べたいって思いました。味の濃い熱い物が食べたい…ラーメンとか…。
ちなみに周りにファミレスとかコンビニとか、店と呼ばれるものは一切ねえから。(※お寺の下に1軒だけお食事処があって、そこは夜通し営業してます。ラーメンとかあるよ)
私は運転手ではなかったのでタンブラーに熱燗やら焼酎お湯割りやら入れて持っていきました。
でもカップ酒は蘇民食堂にもあるしなんと地酒もあり、とらまづというにごり酒はあの辺でしか飲めないのでオススメです。(同じ県内だけど私の住んでる辺りではほとんど見かけない)
そしていよいよ4時からメインイベント蘇民袋の争奪戦が始まります。
長くなったのでここで一旦切ります。